Q.疲れると口唇ヘルペスが現れます。病院にいくと時間がかかるので,市販の何かよいお薬がありますか?

口のまわりに痛みを伴う水ぶくれをつくる口唇ヘルペスは,ヘルペスウイルスが原因でおこる感染症です。1回感染すると症状が治まった後も,ヘルペスウイルスはひそかに体内にひそんでいるため,免疫力がおちてくると再発しやすい病気で,一般的に抗ウイルス薬の軟膏やクリームで治療します。
抗ウイルス軟膏薬は,ウイルスが増えるのを抑える薬なので,できるだけはやく使い始めるほうが効果的です。

すぐに病院に行きたくても時間がかかるので受診できない人のために病院でも処方されている抗ウイルス薬アシクロビルを5%配合している軟膏であり,「口唇ヘルペスの再発」に限り使用できるアクチビア軟膏とヘルペシアクリーム,ヘルペエース(軟膏)が発売されています。医療用の「アラセナーA軟膏3%」,「アラセナーAクリーム3%」と同じ3%ビダラビンが肺胞されているアラセナSは軟膏,アラセナSクリームはクリームタイプが発売されています。使用できるのは過去に医師により口唇ヘルペスと診断され治療を受けたことがある人に限られます。

初めて症状がでたような場合には,症状が重症化することもあるため,必ず医師の診断・治療を受けることが必要です。
唇やその周りに,ピリピリ,チクチク,ムズムズといった再発の症状が現れている初期の段階では,ヘルペスウイルスが活発に増えている時期なので早めに上記の軟膏を使用することでウイルスの増殖を抑制し症状がひどくなるのを予防します。

使用期間は10日間程度が目安ですが,かさぶたができて患部が乾燥すれば,薬の使用を中止してもかまいません。

また,5~7日間使用しても症状が改善されない場合,あるいは悪化するような場合には,症状が重いか,ほかの病気の可能性もあるため使用を中止してすぐに受診しましょう。


口唇ヘルペス(疱疹)とは「口のまわりにできる小さな水ぶくれ(小水疱)などの症状」であり,単純ヘルペスウイルスの感染によっておこる疾患です。
単純ヘルペスウイルスⅠ型・Ⅱ型があり,Ⅰ型は,ウイルスが顔の三叉神経節に潜むため,おもに顔面や上半身に口唇ヘルペス,角膜ヘルペス,ヘルペス脳炎などを起こします。
Ⅱ型は,ウイルスが腰の部分の腰・仙骨神経節に潜むため,主に性器ヘルペスなど下半身に発症します。
その他に人に感染するヘルペスウイルスには水ぼうそうや帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルス,サイトメガルウイルス,EBウイルス,突発性発疹などを引き起こすヒトヘルペスウイルス6型・7型,カポジ肉腫が起こるヒトヘルペスウイルス8型などがあります。

口唇ヘルペスの症状の出方はその人の年齢,体質,体調などによって異なります。小児の初感染では,何の症状もなく気づかない例がほとんどです。大人の場合,4~7日の潜伏期間を経て,唇や口の周りがピリピリ,チクチク,ムズムズするなどの違和感やかゆみ,ほてりが出て,赤く腫れ,しばらくすると赤く腫れた上に水ぶくれができます。発熱など全身症状が出ることもります。
1週間前後で水膨れが,かさぶたになり数日で自然におさまってきます。この後,ウイルスは知覚神経を逆行して三叉神経節や腰仙髄神経節にたどりつきそこに潜みます。症状が出るのは,カゼをひいたときとか,症状ストレスがたまったときなど抵抗力や免疫機能が低下しているときに,ちょっとした刺激が潜んでいたウイルスを暴れさせてしまい神経節から神経に沿って口,眼,性器などに移動し,繰り返し感染症を起こします。

口唇ヘルペスの治療法は,ウイルス遺伝子の複製をとめてウイルスが分裂・増殖するのを抑制する抗ウイルス薬を使用します。
抗ウイルス薬には外用薬と内服薬があり,症状の程度などによって使い分けます。市販薬には,軟膏やクリームがあります。これらの市販薬は,口唇ヘルペスの再発治療に限定されています。
口唇ヘルペスは神経細胞内にもウイルスが増殖しているため,外用薬で皮膚や粘膜の病変を抑えると同時に内服薬で神経節のウイルスの増殖を抑えます。内服薬は予兆が出た段階で服用すると回復が早いだけでなく,神経節に戻るウイルス量が減って再発しにくくなります。
●外用薬(軟膏)……アシクロビル,ビダラビンが,ごく軽症で再発が頻繁でない口唇ヘルペスに使用します。
●内服薬……アシクロビル,バラシクロビル塩酸塩,ファムシクロビルが,皮膚症状だけでなく,神経細胞内のウイルスの増殖を抑制する作用があります。

単純ヘルペスウイルスは人から人への接触感染によってうつり非常に感染しやすくなっています。
症状がでている時の日常生活上の注意点としては
① 患部に直接触らない。
水ぶくれなど症状がでている時期は,大量のウイルスが増殖しており,患部を手で触れると他のところに感染したり,間接的に他の人にうつったりするので,もし触ったら直ちに水で洗い流すなど注意しましょう。
② タオルや食器など共有しない。
・ウイルスのついたタオルなどから感染します。タオルは日光によく当てて乾かします。
・食器は洗剤などを使用して丁寧にきっちりと洗いましょう。
③ 患部の水ぶくれは,やぶらない。
患部は不潔にならないように注意しましょう。

【医薬品情報管理室】