Qアルツハイマー型認知症と診断を受けたのですが、どんな治療法があるのですか?
まず、アルツハイマー型認知症について簡単に説明を行います。
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも一番多い認知症です。アルツハイマー型では最近の出来事を忘れてしまうという症状が見られますが、これは記憶を司っている、海馬と呼ばれる部分に病変が起こる為に、記憶が出来なくなるものです。
誰でも忘れる事はありますが、忘れている事を指摘されると「そうだ、忘れていた」と思い出せます。でもアルツハイマー型の方では、思い出す事が出来ません。
その他の症状としては、判断能力の低下、日付が分からなくなったり、自分のいる場所が分からなくなるなどの、失認、失行など見当識障害が起こることもあります。
更に病状が進行すると、大事な物が無くなった、盗られたと家族を責めたりする「物盗られ妄想」が出たり、外へ出てウロウロする「徘徊」、お風呂に入らないなどの「介護拒否」などがよく見られるようになります。また家族の顔でさえわからなくなったり、怒りっぽくなったりすることもある病気です。
質問のご回答ですが、現在日本では4種類の治療薬が発売されています。
現時点では、アルツハイマー型認知症を治す治療薬はありませんが、進行をゆっくりにさせる薬を用いる治療を行います。
なので、早期発見、早期治療を始めた方が症状の進行が緩やかになります。
【治療薬】
①アリセプト(塩酸ドネペジル)
記憶の働きに関わるアセチルコリンという神経伝達物質が、脳内において減少する(不活性となる)事がアルツハイマー病の発症に関連が深いと言われています。このアセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼという物質を阻害し、アセチルコリンの量を保つ薬です。
用量については、1日1回3mgから開始し、1~2週間を経て5mgへ増量します。高度のアルツハイマー型認知症の患者に対しては5mgで4週間実施した後、10mgへ増量するのが一般的です。薬の効果が現れるまでには個人差はありますが概ね12週間(約3か月)程度を要します。
薬の形状も多種あり、現在では「細粒・口腔内崩壊(OD)錠・ゼリータイプ・ドライシロップタイプ」があります。
(特徴・詳細)
(1)細粒:粉状の薬。飲みこむ力が弱い等の理由で錠剤が飲みにくい方向けの剤形です。
(2)口腔内崩壊(OD)錠:唾液または少量の水で溶けるよう設計された薬。飲みこむ力が弱い等の理由で錠剤が飲みにくい方向けの剤形です。
(3)ゼリータイプ:白色~微黄色の内服ゼリー剤。水を飲む際などにむせ込む事の多い方に適しています。
(4)ドライシロップタイプ:細粒もしくは顆粒の剤形。直接飲む事も水に溶かして飲む事も可能です。また、少量の水に溶いてペースト状にして上あご等口の中に塗りつけた後に水を飲んで服用する事も出来ます。但し、水に溶かした後は薬の効果が低下しやすくなる為、速やかに服用するようにして下さい。
患者様の状態にあわせた剤型を選択してもらいましょう。
②レミニール(塩酸ガランタミン)
レミニールは次の2つの作用で脳内のアセチルコリンによる神経伝達を助けます。
作用(1)
アリセプト同様に、アセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内のアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助けます。
作用(2)
アセチルコリン受容体に作用し、受容体の立体構造を変化させアセチルコリンに対する感受性を高めアセチルコリンの働きを助け情報の伝達を活性化します。
用量については、1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始し、副作用の有無を観察した上で、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量し継続します。その後は症状に応じ1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量することが可能です。
剤型は錠剤、口腔内崩壊錠(OD錠)、内用液の3種類があります。
③イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ(塩酸リバスチグミン)
アリセプト同様に、アセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内のアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助けます。他にもアセチルコリンの分解に関わるブチリルコリンエステラーゼの作用も阻害し、脳内のアセチルコリンの濃度を高めていきます。
他の薬剤と大きく異なる点として、これは貼付剤になります。用量については、1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回18mgを貼付します。貼付箇所としましては、背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替えます。
④メマリー(塩酸メマンチン)
グルタミン酸は脳内において記憶や学習に関わる神経伝達物質という役割がありますが、認知症患者の脳内では異常なタンパク質によってグルタミン酸が過剰な状態となってきます。メマリーには、過剰なグルタミン酸の放出を抑え、結果的に脳神経細胞の壊死を防ぐ働きがあります。
上記①~③とは作用が異なるため、①~③のいずれかの薬剤と併用することが可能です。
用量については、1日1回5mgから開始し、1週間毎に増量し4週間後に目標とする維持量(最大で1日20mg)とします。ただし、患者様の状態に応じて投与量は異なります。
剤型は錠剤、口腔内崩壊錠(OD錠)があります。
以上が、アルツハイマー型認知症に用いることができる4種類の薬剤になります。それぞれ、剤型、使用回数など異なりますので、その患者様の状態にあわせた薬を選択してもらいましょう。
作成年月日:2015.7.16
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて死んでしまい減っていく為に、神経を伝える事が出来なくなると考えられています。また神経細胞が死んでしまう事で、脳も委縮していき身体の機能も徐々に失われていきます。
アルツハイマー型認知症の予防と症状の改善策としては、まず早期発見と早期治療が大切になります。
現時点では、アルツハイマー型の完治は出来ないとされています。しかし、早期発見、早期治療を始めた方が症状の進行が緩やかになります。最近何かおかしいと異変に気付いたら、受診を勧めましょう。認知症専門病院に行けるなら一番良いですが、ご本人が納得しなければ、神経内科や物忘れ外来などがあり、CTやMRIなどの検査が出来る病院に行ってみてください。
アルツハイマー型になる原因ははっきり解明出来ていませんが、生活習慣を見直す事で、予防に繋がるとされています。青魚を食べるようにすると認知症発症リスクが下がると言われていますので、積極的に食べましょう。
また高血糖状態が長く続くと、認知症に繋がりやすいとされています。血糖値が高い事を指摘されている人は受診し、高血糖が続かないようにしましょう。喫煙は出来るだけ止め、飲酒は控えるようにしましょう。運動は適度にするのが予防に良いとされていますので、散歩などをしてみましょう。
睡眠不足も認知症との関わりがあると報告されています。
もう一点大切なのが、楽しみながらリハビリができることです。
リハビリを行うと、脳が活性化し症状の改善に繋がると言われています。簡単な本を、声を出して読んでみる。音楽を聴いたり、一緒に歌うのも良いです。
家族と昔話をよくしましょう。回想法というリハビリで脳が刺激されます。
また手指を使う折り紙やちぎり絵やお手玉など、遊びも兼ねて楽しくリハビリが行えるようにしましょう。
デイサービスなどの利用は大勢の人と会う事になり、良い刺激になる場合があるので、ご本人が嫌でなければ勧めてみましょう。